農産物を生産するだけにとどまらず、加工や販売まで手掛ける農業の6次産業化。
経営の規模にかかわらず、6次産業化に取り組む農家は多くいらっしゃいます。
実際、弊社においても各都道府県やJA様から相談を受けたり、事業サポートすることが多々あります。
(現在も複数の行政機関に関して、海外販売促進計画や6次産業化案件などを請け負わせて頂いています。)
相談に来られるケースにおいて良くあることですが、過去に6次産業化を行ってはいるものの、
すべての例で成功しているわけではなく、中には投資をしたものの失敗してしまった事例もあります。
弊社では社内に公認会計士や税理士を始め、大手コンサルティングファームなどの経験豊富なスタッフや、
専門調理師やJSA認定シニアソムリエ、野菜ソムリエ、中医薬膳師などが在籍しています。
また国内を代表するトップレベルの料理人やソムリエなどと連携してビジネスを運営しており、様々なノウハウを蓄積しています。
農産物を単に食材として販売するのではなく、付加価値を加えた新たな商品として販売する6次化は、
収入の向上や安定、新たなビジネスの可能性といった未来への希望を広げる要素が多くあります。
しかし同時に、課題やリスクも抱えており失敗事例が多いことも事実です。
今回は弊社が長年培ったノウハウを基に、農業の6次産業化をするうえで知っておきたい課題や問題点、リスクについて洗い出してみたいと思います。
◆ 6次産業化の課題
|1. 消費者視点の難しさ
6次産業化プランナー登録は弊社でも行っていますが、農生産物の業界に携わっていますと、
よりよい『 食 』を生産するために、日夜研究に取り組む方も少なくはないようです。
一方で、栽培した農産物を販売することや消費者の立場になって考える(マーケットイン)といった、
農業以外の分野への関心は薄くなってしまいがちのようにも見えます。
しかし6次産業化を考えるのであれば、「ニーズ調査」「消費者視点での商品づくり」「販売ルートの開拓」「消費者に響くマーケティング」など、これまで生産者として必要とされていなかった分野への取り組みが必要になります。
特に商流と市場(マーケット)を考慮し、客観的な視点で考える必要があるのですが、
いわゆるMECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive)に欠けている案件が少なくありません。
「美味しい」は嗜好の主観でしかありませんし、美味しければ売れるというものでもありません。
市場(消費者)のニーズを汲み取る、創り出す視点が欠かせないのです。
この点において、弊社では日頃から特別なトレーニングを受けたスタッフや、外部連携している国内を代表するシェフや様々様々
ソムリエ達と「官能検査」も行っています。
実際、野菜や果物においても、客観的な「美味しさ」を明確化しないと売れないということが多々あるのです。
|2. 利益が見込めるまでの時間
6次化をスタートしてから、実際に利益が生まれるまでには(投資回収後)、
農家の方々にとっては、想像しているよりも長い時間がかかることがあります。
例えば、収穫した規格外品のトマトをドライトマトやジュースなどにする場合、
商品の開発、パッケージデザイン、販売ルートの開拓、加工場の確保(場合によっては建設)など、
商品を販売するまでに様々な準備や投資が必要になることもあります。
規模によっては、準備期間に数年を要することも実際にあります。
また販売を開始してから商品が売れるようになるまでの時間、そして投資した資金を回収するまでに長い時間がかかる事は多々あります。
|3. 組織的な経営観念と中長期計画
6次産業化は、単に農産物を原材料として加工品を作るといったものではありません。
よくあることですが、自宅でちょっとした料理やお菓子を作るように考えていらっしゃるケースが少なくありません。
飲食店も同様ですが、加工した食品を流通させるためには、食品衛生管理は最も重要な課題となります。
その上で会社組織のように、各部門で共有しながら目標を管理する、企業的な動きも求められます。
生産部門、加工部門、販売部門でビジョンと目標を共有して、長期的な目標が達成できるように部門間で協力する、経営資源に見合った範囲でビジネスを展開するなど、会社経営のような意識や取り組みも必要になるのです。
こういった視点を持たなければ、小規模経営でも余計な負担と費用だけが増えてしまうことになりかねません。
◆ 散見される6次産業化での失敗例の問題
●主観による、ニーズを見誤った商品開発
商品ボリュームやサイズが消費者ニーズに合っていなかったり、
市場トレンドからかけ離れた商品を開発してしまったといった失敗が多々あります。
思い込みや主観ではなく、商品開発の際には、市場調査はもちろん食品バイヤーなどの専門家の話を聞くことも大切です
そして、それらの意見や考えに明確な根拠(仮説や検証)があることを確認した上で、
今のトレンドやターゲットに合った商品のサイズは?など、ニーズ調査を踏まえたうえで商品を開発することが大切です。
●施策なしのインターネット販売で失敗
コロナ禍になってから、一段とECサイトが盛んになっていますが、HPを作っただけ、
販売サイトに登録しただけで、施策なしでは売れません。
「ネット販売なら売れる」とインターネット販売に乗り出したものの、掛けたコスト分も回収できず撤退してしまう例もあります。
インターネット販売を始めただけでは、顧客は獲得できません。
何故ならば、一見綺麗に見えるHPにおいて検索最適化の対応がなされていないケースが山のように存在します。
これは商品販売サイトに限らず、様々なHPで散見されます。
一番の問題は、綺麗に見えるHPの中身が「プログラミング言語」で構成されており、
写真や見た目ではなく、この中身が最も大切だということを、制作側自体が理解していないケースがとても多いのです。
こういった検索最適化、SNSや実生活を通してのPRなど適切な施策を行わず、
サイトに掲載しているだけでは人気商品を生み出すことは難しいでしょう。
※検索最大手Googleでは、新しいコアアップデートが行われています。
これによる検索最適化対応は、また変化させる必要があります。
https://developers.google.com/search/blog/2019/08/core-updates?hl=ja
◆まとめ
農業の6次産業化は、商品を開発してリリースするだけでは、成功することはほぼ難しいでしょう。
農業以外の専門分野に対する知識も、意識的に積極的に取り入れることが大切です。
専門家の意見を取り入れながら長期的な計画を立て、生産から販売までのトータルプロデュースを心がけることで
事業を成功に導きましょう!
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