時間の概念 その客観性と俯瞰性によるビジネス論 その① 2026.01.01

1.時間とは何か ― 哲学における基礎的整理

① 時間の二つの顔

哲学的には、時間は大きく二面性で語られてきました。

  1. 客観的な時間(クロノス)

    • 1秒は常に1秒、時計で測定される均質な時間

    • 自然科学・経済学・会計の基盤

    • 「計測」と「比較」を可能にする枠組み

  2. 主観的な時間(カイロス)

    • 退屈な1時間は長く、熱中した1時間は短い

    • 人間の心理、経験、意味づけに依存する時間

    • 機会のタイミング、意思決定の瞬間

ビジネスは、この 「測定可能な時間」と「経験される時間」 の両方を扱う営みです。
しかし多くの企業は前者だけを扱い、後者を軽視します。

ここに多くの企業で非効率・摩擦・判断の遅延が生じています。


2.客観性 ― 時間を「外在的秩序」として扱う

① 客観的時間がビジネスに与える意味

客観的時間は、企業に以下の性質を与えます。

  • KPI・締切・四半期決算・ROI などの「評価尺度」

  • プロジェクト管理(ガントチャート、ロードマップ)

  • 生産性の評価軸(1時間で何を生むか)

つまり客観的時間は 「統治と管理のためのインフラ」 です。

② しかし客観時間は「支配の道具」にもなる

  • 〆切は人を急がせるが、思考を浅くさせる

  • 生産性測定は効率を促すが、創造性を殺す場合がある

  • 四半期利益への執着は長期価値を壊す

客観時間は秩序を生む一方で、「短期主義」「消耗」「形式的効率」という副作用をもたらしがちです・・・

ここで必要になるのが 俯瞰視点なの です。


3.俯瞰性 ― 時間を「構造」として眺める

① 俯瞰とは何か

俯瞰とは、

いま起きている現象を「時間軸の上で未来・過去と関連づけた視座」で捉えること

と言えます。

単なる鳥瞰(上から見る)ではなく、

時間の長さ・広がり・流れの中に現象を置き直す知性 です。

② ビジネス俯瞰の三層

俯瞰性には少なくとも三層があります。

  1. 短期俯瞰(オペレーション)

    • 1週間~1年

    • 日常業務効率、プロジェクト遂行

  2. 中期俯瞰(戦略)

    • 1年~5年

    • 事業ポートフォリオ、収益モデル再設計

  3. 長期俯瞰(存在論的視点)

    • 10年~30年

    • 企業の存在意義・社会的役割・文化形成

これらを同時に成立させることが、経営の核心です。
とても残念な事に、多くの企業は短期に閉じ込められ、未来を失っています・・・・

総務省データで、10年後に存続する企業は6.4%(93.6%がなくなる可能性)と言う事実を見れば明らかでしょう。


4.哲学が教える「時間と意思決定」

① ハイデガー:人間は「未来に向かって存在する」

ハイデガーは、人間の存在を

「未来への投企(プロジェクション)」と捉えました。

  • 人は常に「これからどうなるか」を前提に行動する

  • 現在は未来の準備であり、過去は未来を形作る参照枠

これはビジネスと完全に一致します。

この点企業の存在とは、

未来像を描き、それに自己を投射し続ける営み

とも言えます。


② ベルクソン:時間は「流れ」であり、分割できない

ベルクソンは、時計で測る時間と、意識の中で流れる時間は別物だと言います。

ビジネスへの示唆:

  • 組織文化の熟成

  • 顧客関係の信頼構築

  • ブランド形成

これらは「年数」で測れるものではなく、「蓄積された経験の密度」で形成されます。

この理解が無い企業は「3年経ったから成熟した」と錯覚し、失敗します。


③ 経営哲学的帰結

哲学が時間について提示する教訓は次の通りです。

  • 時間は単なるリソースではない

  • 時間は企業の存在そのものを規定する構造である

  • 未来像を持たない企業は、ただ現在を消耗するだけ


5.ビジネス実践への応用


① 戦略:短期利益 vs 長期価値のマネジメント

客観時間だけに依存する企業 → 四半期主義

俯瞰時間を導入する企業 → 持続戦略

推奨される経営設計

  1. 短期(収益)KPI

    • 利益率・キャッシュフロー

  2. 中期(成長)KPI

    • 新規事業比率

    • 顧客継続率

    • 人材育成指数

  3. 長期(存在価値)KPI

    • ブランド信頼

    • 社会への価値貢献

    • 企業文化の成熟

これにより、時間を 管理対象 → 統治フレーム → 存在価値の軸 へ昇華させます。


② マネジメント:時間知能(Time Intelligence)の導入

優れたリーダーは、

「時間をどう認識し、どう使わせるか」

を設計する存在です。

具体論

  • 仕事のスピードではなく リズム を設計する

  • 「急げ」ではなく「いつ判断すべきか」を設計する

  • 期限ではなく 機会のタイミング設計 を重視する


③ 組織文化:時間の共有認識をつくる

組織にはそれぞれ固有の「時間感覚文化」があります。

悪い組織時間

  • 常に緊急、常に修正

  • 未来の話をすると「まず今を見ろ」と潰される

  • 成果を早く求めすぎ、根が育たない

良い組織時間

  • 「育てる」概念が存在する

  • 待つ能力を持つ

  • 長期と短期が対話する


④ マーケティング:顧客の「主観時間」を読む

顧客は客観時間で意思決定しません。

  • 購買モーメント

  • 機会の瞬間

  • ライフイベント

これらは 主観時間の節目 です。

ここを理解した企業は、
単なる商品提供ではなく「人生の時間設計企業」になれることでしょう。

※かくいう弊社も、悪戦苦闘しています💦


6.結論 ― 時間の客観性と俯瞰性がもたらすビジネス知

  1. 客観時間は企業の秩序をつくる

  2. 主観時間は人と組織の意味をつくる

  3. 俯瞰的時間視座は企業の未来をつくる

したがって、優れた経営とは

「時間を測る経営」から

「時間を設計する経営」へ

そして最終的には

企業とは“時間の使い方”を設計し続ける知的存在である

と言えるのではないでしょうか。

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