前回・前々回のブログでは、営業職を中心に「適性と権利の勘違い」「経営者と管理職の本質的な違い」について整理しました。
売上という可視化された数字の前で、人は自分の役割を過大に評価しやすい。
それは人間の心理として理解できる部分もある。
しかしながら、企業は「感情」で動かすものではなく、「役割と能力」で動かすものである、というのが私たちの一貫した考えです。
今回は、その対極ともいえる視点から切り込んでみたいと思います。
「総務職」という、数字では語られにくい役割の話です。
総務は、数字に現れない。売上を直接作らない。
だからこそ、一般的にも軽視され、また、担っている本人も自分の仕事の価値を過小評価しがちです。
しかし弊社・株式会社然の考えでは、少なくとも現時点では、総務こそが組織の「管制塔」でなければならない、と考えています。
それは単なる精神論ではなく、組織の持続と健全な発展のための、戦略的な設計思想です。
そして同時に、「総務だから管理職や経営職は関係ない」という思い込みもまた、重大な勘違いです。
本稿では、総務職を基盤にして、一般職から管理職、そして経営職へとステップアップしていくための考え方、それぞれの役割と詳細、そして陥りやすい勘違いを、包み隠さずお伝えしたいと思います。
SECTION 01
なぜ総務が「管制塔」でなければならないのか
まず前提として、「管制塔」という言葉の意味を考えてみましょう。
空港の管制塔は、自分では飛ぶことはありません。
しかし、全ての機体がどこにいて、何をすべきかを把握し、指示を出し、衝突を防ぎ、安全な離着陸を可能にする司令塔です。
実際、管制塔が機能しなければ、どれだけ優秀なパイロットがいても飛行機は正常に運航できません。
管制塔としての総務 ― 設計思想
営業は「売上」を作る。それは事実であり、重要な機能です。
しかし営業が最大限に動けるのは、「飛べる環境が整っている」からこそです。
時に売上偏重となりがちな営業職をコントロールし、その環境を整えるのが総務の役割です。
労務管理・法務対応・情報管理・社内規程の整備・コンプライアンスの維持・経営陣へのレポーティング。
これらは、売上という数字には直接現れない。しかし、どれか一つが機能不全に陥れば、営業の飛行ルートが閉ざされ、会社全体が揺らぎます。
さらに重要なのは、組織バランスを保つリスクヘッジ機能です。
「売上を作っている自分が最も重要だ」
という営業特有の思考的バイアスを、構造として制御するのも総務の役割のひとつです。
適切な規程・評価基準・役割の明文化がなければ、感情が組織を支配してしまう。総務はその防波堤でもあります。
▲ よくある「総務の勘違い」
- 雑務係
- 便利屋
- 書類係
- 電話番
- 社内の何でも屋
- 売上を作らない部門
これは総務に対するおかしな固定観念です。
総務の本質は、会社全体が正しく動くための土台を整えることです。
営業が外で商談できるのは、契約、請求、備品、情報共有、社内ルール、顧客管理、会議体が整っているからです。
経営者が判断できるのは、社内の情報が整理され、数字や現場状況が上がってくるからです。
社員が働けるのは、職場環境、規程、手続き、労務、設備、安全、情報管理が機能しているからです。
つまり、総務は会社の裏側にある神経系のような存在です。
目立たないから重要ではないのではありません。
目立たない場所で全体をつなぐからこそ、重要なのです。

SECTION 02
一般職(総務)の本質と役割
一般職とは何か。それは「与えられた職務を正確に、確実に遂行する」役割です。
これは決して低いレベルではありません。正確・確実・再現性。これなしには組織は機能しません。
総務一般職に求められること
一般職の段階では、まず「自分の担当業務を完全に理解し、ミスなく遂行できること」が最低条件です。
しかしそれだけでは、「高度な専門知識を持つ作業員」にすぎません。
以前のブログで述べたサービス業の例と同じです。 http://justice-j.ne.jp/5960
大切なのは、日常業務の中で常に「なぜ、こうするのか(Why)」「どうすれば、もっとよくなるか(How)」を考え続けること。
書類を処理する時に、
なぜその書式が必要なのか。
なぜそのフローになっているのか。
この疑問を持てない人は、どれだけ年数を重ねても、作業者の枠を出ることができません。
「人は答えを得た時に成長するのではなく、疑問を持つことができた時に成長する」
一般職における「本質」の探究
総務の仕事は多岐にわたります。
給与計算・社会保険手続き・契約書管理・備品管理・規程整備・各種申請対応……。
しかしこれらはすべて、「会社が人を雇い、事業を継続できる環境を維持する」という本質の下に存在しています。
この本質が見えている人と見えていない人では、同じ業務をしていても、その品質と成長速度に雲泥の差が生まれます。
| 作業者レベル(成長が止まる) | 一般職として機能している状態 |
|---|---|
| 言われた通りに処理する | 処理の意図と根拠を理解している |
| 問題が起きてから報告する | 問題を予見してリスクを事前に伝える |
| ルールを守ることが目的になっている | ルールの目的を理解し運用できる |
| 他部署との連携を避ける | 他部署の業務フローを把握している |
| 「前例通り」を優先する | 「より良い方法がないか」を常に考える |
SECTION 03
キャリアステップの全体像
以下に、総務職を基盤としたキャリアの三段階を整理します。段階は上下関係ではなく、「機能の質的変化」です。
一般職(総務)― 「機能する作業者」から「思考する実行者」へ
- 担当業務の完全な習熟(給与・労務・契約・備品・規程)
- Why・How を日常の問いとして持ち続ける習慣の形成
- 他部署・他職種の業務への理解と連携力
- 情報の整理・記録・報告を「経営の目線」で行う意識
- 法令・コンプライアンスの理解(単なる遵守でなく、意味の理解)
管理職(総務管理) ― 「仕組みを整える者」として機能する
- 組織全体の業務フローの設計・改善・マニュアル化
- 数値管理(コスト管理・固定費の把握・予算の策定補佐)
- 人材配置・評価制度への参画と提言
- 各部門との調整役として「全体最適」視点を持つ
- 経営者への正確なレポーティングと課題提言
- 外部専門家(弁護士・社労士・税理士)との連携窓口
経営職(経営参画) ― 「会社の存続と方向性」を担う
- PL・BS・CF を理解し、経営判断に参画できる
- ガバナンス設計(役割・権限・報酬体系の明文化)
- 採用戦略・組織設計の意思決定への関与
- リスク予見と危機管理(法的・財務的・人的リスク)
- 中長期の事業戦略を「組織の実態」から検証する能力
- 経営者として孤独な判断に耐える精神的自律
管理職は「現在」を最適化する事が役割の一つです。
経営職は「未来」を設計する。
総務出身の経営者が強いのは、「現場のリアル」と「全体の構造」の両方を知っているからだと言えるでしょう。

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