官能検査についての基本考察 ① | 株式会社然|食の専門コンサルティング官能検査についての基本考察 その概要 ①
官能検査についての基本考察 その概要 ①  2020.08.17
最近、味覚評価について依頼を頂くことが多くなりました。
以前から、野菜や果物などは頻繁に行っていましたが、最近はパンやジャム、お菓子、ジュースなどの食味検査依頼もかなり頂いています。

ただ依頼される内容の中には、理化学的評価(物理的な検査)を希望されているケースもあり、
弊社の場合は、いわゆる官能検査のみで、まだまだ誤解が多いようですのでこの場にて官能検査のご説明をさせて頂ければと思います。

◆官能検査とは?

官能検査は、工業製品や食品を人間の五感(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚)などの五感を用いて判定する検査方法です。
官能検査とは、検査の基本とも例えられる身近な検査方法で、人間の五感を利用して製品の品質を判定する検査であり、工業製品などの検査でも世界中で用いられています。



●主な官能検査方法の種類

官能検査を行う際には、調査する製品の性質などを考慮したうえで、検査方法の種類を選択しなければなりません。
代表的な方法は、二点識別法、三点識別法、一対比較試験法ですが、配偶法、順位法、評点法、シェッフェの一対比較法、
SD法などの評価方法があります。

それでは、それぞれの方法について解説していきましょう。

1.二点識別法

二点識別法は、客観的に差のある2種の試料を用意し、
「硬さ」「柔軟さ」など、指定する特性について該当する試料を判断させる検査方法です。
対象2種の差異の確認、パネリストが対象2種間の差異を識別できるか判断するために用いられています。



 2.三点識別法

三点識別法も2種の試料を比較する検査方法です。
ただ、三点識別法の場合は、比較させる試料が3種となり、2種は同じ試料、1つは性質の異なる試料を用意し、
どの試料が他の2種と異なる試料であるかを選択します。
対象間の差異の確認、パネリストの識別能力を測るために使用されるのは二点識別法と同様です。

二点識別法よりも比較対象となる試料が増えることで、より集中して異なる試料を選択させることが可能となり、
精度の高い調査を行うことができます。



3.一対比較試験法

複数の試料を比較する際に、それらの試料を対にして取り上げ、一対一比較を繰り返すことにより、
それぞれの試料の順位付けを行う検査方法です。

回答者は試料について、一対一で比較すればよいため、1回ごとの評価の負担がかからず、評価の矛盾が起きにくいという特徴があります。例えば、類似度の高い試料同士でも、その違いを詳細に評価、分析できるため、製品開発時のコンセプト案などの選定にも利用することが可能です。



4.配偶法

複数種類の対象物を2組作り、各組から同種の試料を1個ずつ組み合わせる方法です。
パネルに試料間の差異を識別する能力があるかを確認するために使われ、分析型官能評価でよく用いられる方法です。
複数回の繰り返しや、複数人のパネルでの調査を行うことによって、試料間に差異があるかどうかの判断にも使われます。



5.順位法

複数種の対象物(3種類以上)に対して、味の濃さ、大きさ、好ましさなど、特性に関する順位をつけさせる方法です。
分析型官能評価のパネルの識別能力を確かめたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向の有無を確認したりするために使われます。



6.評点法

与えられた試料(1種類以上)について、パネル自身の経験を通じて、その品質特性(味の強度、好みの程度など)を点数によって評価する方法です。評点の尺度(良い悪い、強い弱いなど)にはさまざまなものが使われます。
分析型官能評価のパネルの評価能力の判断に使われたり、対消費者の嗜好型官能調査で嗜好の傾向を確認したりするために使われます。



7.シェッフェの一対比較法

一対比較法で、対にした2つの試料に対し、強さや好ましさで判断するだけでなく、その程度を尺度で評価したりする方法です。試料の組み合わせや試食順序などの影響を判断の要因として捉えることができ、より精密な判断を行うことができます。
一対比較法と同じく、分析型官能評価と嗜好型官能評価どちらでも使われます。


 

8.SD法(意味微分法、意味測定法)

対象物のもつ特性(印象)を正確にかつ詳細に描写するために、たとえば「上品-下品」「美しい-醜い」などの対象用語を両端に置き、5~9段階の評価尺度上で評価をする方法です。
まとめ方の一つとして、評価尺度の各段階に数値(たとえば、+3~-3など)を設定し、n人の評価の平均値を尺度上に点で記入し、
線で結ぶとともに、各対象物の特性を書き入れると、結果をグラフ化して傾向を読み取ることができます。

 

●官能検査を行う際の留意点

官能検査は、人間の感覚に頼って検査を行うものですので、気を付けなければならない点があります。
特に、個人ごとに評価基準に対する考え方・感覚が異なることから、体調・先入観などが評価結果に影響する場合が少なくありません。
そのため、実際に役立てることのできる信頼性の高いデータを得るためには温度や湿度、照明・騒音などの環境を検査する対象物に適した環境に整えることが必要です。

また、工業製品などを製造している場合には、限度見本を用意する必要があります。
限度見本は、合格品の限度見本と不合格品の限度見本があり、官能検査などには必須です。
実際に製造した製品と見本とを比較しつつ、合否の判断に迷った際の判断基準となるためです。

※1 ウェーバー比

 刺激の弁別閾(丁度可知差異:気づくことができる最小の刺激差)は、基準となる基礎刺激の強度に比例することを見いだしました。
 はじめに加えられる基礎刺激量の強度をR とし、これに対応する識別閾値をΔR とすると、R の値にかかわらず下記の式が成立します。
 この一定の値をヴェーバー比と言います。

 たとえば、100の刺激が110になったときはじめて「増加した」と気付くならば、
 200の刺激が210に増加しても気付かず、気付かせるためには220にする必要があるというものです。


 {\frac  {\Delta R}{R}}={\mathrm  {constant}} 

※2 フェヒナーの法則

 ヴェーバーの弟子であるグスタフ・フェヒナーは、ヴェーバーの法則の式を積分することで、以下の対数法則を導き出しました。
 刺激量の強度R が変化する時、これに対応する感覚量E

 

 ここでC は定数です。 つまり心理的な感覚量は、刺激の強度ではなく、その対数に比例して知覚されるというものです。

 

さらに、官能検査を行ううえで、目的を明確にすることも大切だといえるでしょう。
例えば、実際に依頼されたケースとしては、冷凍パンの官能検査でこんな内容がありました。

内容は、どちらが古い製造日のものか?というものでした。
同じレシピ、同じ工程で作られている場合、製造時の温度や湿度などの差によって、
新しい製造日のパンの方が食味が落ちる、と言ったケースがあります。
こういった官能検査においては、食味劣化の有無が目的となります。
製造年月日だけでは決して判断できません。



評価する目的が明確でなければ、それに適した官能検査の手法を選択できず、
官能検査を実施したとしても満足できる結果は得られないのです。

客観的な評価技術がない場合、個性と勘違いして判断してしまうケースも見受けられます。
こうした留意点を把握していなければ、間違った結論が出されることもあるため、注意が必要です。

   

官能検査の評価方法として、評価シートを使用するケースが代表的です。
評価シートはパネリストに試料についての情報を与えるものです。
そのため、評価シートは官能評価において重要なポイントであり、評価シートの内容次第では、
同様の内容の検査を実施しても、結果が大きく異なることもあります。

精度の高い評価シートを作成するためには、シートに記載する説明分や用語に十分な情報が含まれている必要があり、
先入観を与えないようにすることも重要です。
また、評価項目・評価用語の選定が必要となる他、対象物そのものや、検査に適した環境の分析、検討も必要となります。

然においては、野菜や果物を対象とした評価シート、パン専用の評価シート、ドリンク専用の評価シート、
コーヒー専用の評価シート、ワイン専用の評価シートなど、対象物に合わせた細やかな評価シートを使い分けています。

      

精度の高い評価シートを作成する過程を経ることで、適切な官能検査の方法の選定、適切なパネリストの選定が可能です。

適切なパネリストについては、一般消費者を対象にした商品の場合、一般消費者もパネリストとして必要です。
ですが、軸になるのは適切なトレーニングを経て、客観的評価の内容と方法を理解したプロフェッショナルでなければ、
決して正確な判断は出来ません。
単に「これは美味しい、美味しくない」といった単純なものではありません。

例えば、調味料会社における専属テイスターの人達は、0.001%違いの溶液(砂糖水やクエン酸水など)を
ほぼ100%の確率で認識できます。 
然においては、0.01%違いの溶液チェックに関してはほぼ全く問題なく客観認識ができ、
対外的な官能検査実績も多数ございます。



さて、次回は具体的な官能検査の内容についてご案内して参ります。

一般消費者とプロフェッショナルな立場は、官能検査という点において全く異なります。
素材の認識はもちろん、製造工程の理解も含めて、幅広い経験と知識、そして才能を持ち合わせたものだけが、
客観的評価として対応することが出来るのです。

You are what you eat!

La destinée des nations
dépend de la manière dont elles se nourrissent ‼︎

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【発行者】 ジャスティスプランニング

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