総務は組織の管制塔的な役割である という前提 ② | 株式会社然|食の専門コンサルティング
総務は組織の管制塔的な役割である という前提 ② 2026.06.01

SECTION 04

管理職への移行 ― 最も多く見られる誤解

総務職が管理職に移行するとき、最も多く見られる誤解があります。
それは「業務の量と年数が、管理職の資格を証明する」という思い込みです。

10年間、正確に給与計算をしてきた。
5年間、ミスなく契約書を管理してきた。

それは確かに価値ある実績です。
しかし管理職に求められるのは、「自分が正確にできること」ではなく、「誰でも正確にできる組織を設計できること」です。

 

管理職に求められる思考の転換
観点 一般職の思考 管理職の思考
仕事の対象 自分の業務 チーム・部門全体の業務
問いの立て方 「どうやって自分がやるか」 「誰でもできる仕組みを作れるか」
報告の性質 事実の伝達 問題提起と解決案の提言
時間軸 当日・今週 四半期・年度・中期
コスト意識 与えられた予算で動く コスト構造を設計・管理する


総務管理職の「管制塔機能」とは

総務の管理職が特に意識すべきは、「各部門間の情報と機能の交通整理」です。

営業が無謀な契約をしようとしていないか。
人事制度が実態と乖離していないか。
経費の使われ方に問題はないか。
法令上のリスクが生じていないか。

これらを「見えていても言わない」のは、管制塔が電源を切っているのと同じです。

管理職としての総務は、「不都合な事実を経営者に届ける」勇気と責任を持たなければなりません。

これは対立を生むためではなく、組織を守るためです。
経営者に「都合の良い情報だけ」が届く組織は、静かに、しかし確実に衰退します

管理職への移行で陥りやすい勘違い

  • 「管理職になったのだから部下に任せればよい」→ 任せる前に仕組みを作る責任がある
  • 「自分が一番詳しいから自分でやった方が早い」→ これは管理職の失格条件
  • 「問題を上に上げると自分の評価が下がる」→ 問題を隠す方が組織全体のリスクになる
  • 「経営のことは経営者に任せればよい」→ 情報を提供するのは管理職の職責

 

 

SECTION 05

経営職への移行 ― 「責任の質」が根本から変わる

前回のブログ(組織における役割と実際②)で詳述したように、経営職とは「方向を決める者」です。
営業出身であれ総務出身であれ、経営者に求められる能力は共通しています。

しかし総務出身の経営参画者には、他の職種とは異なる固有の強みがあります。
それは「組織の全体像と実務のリアルを同時に把握している」という視座です。

 

▍ 総務出身が経営職に移行する際の強みと必要な習得事項
総務出身の経営者の強み 経営職移行に向けて習得が必要なこと
組織の実態(人・法・コスト・リスク)を知っている 不確実性下での意思決定(数字がなくても動く判断力)
コンプライアンスと法的リスクへの感度が高い 投資判断・事業撤退の決断(不採算を切る覚悟)
感情的になりにくい、冷静な分析力 市場・競合・外部環境への戦略思考
ガバナンスと役割分担の設計ができる 孤独な判断への精神的耐性と責任の覚悟
各部門の業務フローを構造的に把握している 資金調達・財務管理の実践的理解(PL・BS・CF)

経営職に就く最低条件

前回のブログでも述べましたが、経営の椅子に座る資格は「能力と責任を負う覚悟」によってのみ与えられます。
総務出身であっても、以下のことが最低限クリアできなければ、経営参画はあくまでも名目上のものに過ぎません。

 

▍ 経営参画の最低条件チェックリスト
項目 内容
財務読解力 PL・BS を理解し、キャッシュフローの動きを経営判断に活かせる
法的責任の受容 取締役としての法的責任(会社法・労働法・税法)を理解し負える
組織設計能力 人事評価制度・報酬体系・役割定義を設計・改定できる
不採算の判断力 感情を排し、継続不可能な事業・取引を終わらせる決断ができる
資源配分能力 ヒト・モノ・カネを全体最適の視点で配分できる


 
 

SECTION 06

組織バランスという視点 ― 営業の「勘違い」を防ぐための構造設計

繰り返しになりますが、弊社が総務を「管制塔」と位置づける理由の一つは、営業職を含む売上貢献部門が勘違いしないための、組織バランスのリスクヘッジにあります。

「売上を作っているから、自分が最も会社に貢献している」。
この感覚は、人間の心理として自然に生まれます。
無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)のひとつと言えるでしょう。

この感覚が組織内で肥大化すると、何が起きるか。

「売上至上主義」が組織にもたらすリスク

  • 採算の合わない取引を断れない(価格基準の崩壊)
  • コンプライアンスより受注を優先する文化が生まれる
  • 営業インセンティブが財務を圧迫し始める
  • 特定顧客・特定担当者への依存リスクが高まる
  • ブランドが毀損されても「売れているから問題ない」と正当化される
  • 「売れる人間が偉い」文化が定着し、組織全体の質が下がる

これらを防ぐのは、精神論でも、営業への訓告でもありません。
「制度・規程・評価の仕組み」として、構造的に制御することです。
そしてその仕組みを設計・運用するのが、管制塔としての総務の重要な職責なのです。

そして、小さな会社ほど、総務の強さが会社の強さになる!

小さな会社は人の多さで勝てないため、総務が情報・仕組み・役割を整えることで勝ち筋を作る必要があります。

売上規模が20億にも満たないような小規模企業では、総務の役割はさらに重要になります。

大企業であれば、人員の多さで補えることがあります。

部署ごとに担当者がいて、仕組みもあり、誰かが抜けてもある程度は回る。

しかし、小さな会社は違います。

一人が抜けるだけで業務が止まる。

一人の営業に顧客情報が集中する。

社長が実務に埋没する。

感情で判断が揺れる。

ルールが曖昧なまま仕事が進む。

だからこそ、小さな会社ほど総務が強くなければなりません。

人が少ないなら、属人化を減らす必要があります。

情報が散らばるなら、顧客・契約・課題を一元化する必要があります。

営業個人に依存しやすいなら、営業後工程を標準化する必要があります。

社長が実務に埋没しやすいなら、経営判断材料を整える必要があります。

感情で判断しやすいなら、役割・責任・権限を明文化する必要があります。

小さな会社は、大企業のように人の数で勝つことはできません。

だからこそ、情報の速さ、判断の速さ、改善の速さで勝つ必要があります。

その速度を生むのが、管制塔としての総務です。

これはランチェスター的に見ても重要です。

弱者は、強者と同じ土俵で全面戦争をしてはいけません。

勝てる場所を選び、限られた資源を集中させ、局地戦で勝つ。

そのためには、情報が一元化され、営業成果が会社の資産になり、経営者が未来判断に集中できる状態が必要です。

総務は、その状態を作る中心になりえるのです。

 

SECTION 07

まとめ ― 三段階のキャリアで問われること

▍ 各ステージで問われる本質
ステージ 本質的に問われること 成長の鍵
一般職 「作業」を「仕事」にできているか。
なぜその業務が存在するのか理解しているか。
Why・How を止めない問い続ける習慣
管理職 「自分がやる」から「組織が動く仕組みを作る」に転換できているか。
不都合を経営に届けられるか。
全体最適の視点と、勇気ある報告
経営職 「会社の存続責任」を本当の意味で背負える覚悟があるか。
感情ではなく、役割と能力で判断しているか。
孤独な決断への耐性と、財務・法的責任の理解

そして、どのステージにおいても共通して問われることがあります。
それは、「固定観念(アンコンシャス・バイアス)に気づき、問い続けられるか」です。

「総務はこういうものだ」
「一般職はこの範囲の仕事をするものだ」
「管理職はこうするものだ」。

これらの固定観念こそが、成長を止める最大の敵です。
年齢を重ねるほど、この固定観念は強化されやすい。

「而立(30歳)」「不惑(40歳)」という言葉には意味があります。

30代半ば以降になお、「自分には関係ない」「時代に合わない」「世間は、一般的には~」「これは、そういうものですよ」
などと言い続ける人は、少なくともマネージメントには不適格です。

大切なのは、「どのようにすれば出来るのか?」という前向きな問いを、何歳になっても持ち続けることです。

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